Gesundheit2
湯気の立つマグカップを見つめていると、心地良かった。
四人掛けのダイニングテーブルを挟んだ向かいには、ドイツが同じようにマグカップへ口をつけている。イタリアは服の上に、羊毛の膝掛けを羽織っていた。ドイツがリビングのソファから持ってきたものだ。正直それほど寒くはないが、優しくされるのは気分が良い。
いつも自業自得だと言いながら、あれこれ世話を焼いてくれるドイツが大好きだった。
体の関係があるなんて、今でも現実とは思えない。それは、情事以外でのドイツの態度が、友人であったころと何ひとつ変わらないことが原因だった。イタリアの不満はそこにある。 ドイツは好意を言葉にして伝えてくれない。体は慣れてきても照れがあるらしかった。
イタリアは立ち上がる。飲み終えたカップをテーブルに置き、ドイツの隣へまわった。
ドイツを見下ろし、マグカップを持った右手に触れる。
「これも飲むか?」
ドイツが差し出してきたマグカップを受け取り、そっとテーブルに置いた。ようやくイタリアの視線の意味に気づいたドイツは、眉をしかめる。
「イタリア」
椅子の背に手をやり、身を屈めてドイツへ口づけた。ドイツが逃れようと椅子を引いたところへ、すかさず腰掛ける。
「好き……」
「おい」
「大好きだよ」
ドイツの首に思い切り抱きついて、甘えるように頭をすりつけた。顔を上げ、今度は近距離で目が合うと、再び唇を奪う。
長い口付けが始まっても、ドイツはされるがままだった。
イタリアは思う存分味わった。唇を舐め、舌を絡めとり、ドイツの微かな鼻息にすら興奮して、夢中になった。途中何度かドイツの膝上へ乗り直さなければいけなくて、腰を抱いてくれればいいのにと思う。ドイツが抱きしめ、背を撫でる感触を思い出して、体が疼いた。愛おしさにきゅうと胸が締め付けられる。
ドイツから誘ってくれたことはあまりない。もっと激しく求めて欲しいのにと、イタリアは思っていた。いろいろな場所で愛しあうところも想像した。ダイニングで…、またはいつも使っているソファでだって、庭でだっていい。とにかく、我慢出来ないというくらいの熱い情欲を存分に感じてみたかったのだ。
さぞや興奮するだろうと思い、二人きりのときは期待に胸をふくらませたが、実際そんな雰囲気になることはなく、いつもイタリアからベッドで誘うだけだった。
ベッドでの行為に飽きたなんてことはないが、ドイツの理性が、それ以外の場所では鉄壁なまでに崩れないことが少し悔しかった。
その上、三週間ぶりのセックスを、くしゃみなどという理由で簡単にあきらめてしまえるなんて……
イタリアは目を見開いて、ゆっくり唇を離した。
「今日、プロイセン帰ってこないんだよね」
「ああ…」
ドイツの瞳をいくら覗き込んでも、首をかしげても、ドイツはじっと見つめてくるだけだ。
「ハグして」
「ここから降りたらな」
イタリアは口を尖らせた。なかなか思い通りにならないので落胆し、俯きがちに言う。
「ドイツは…、してもしなくても、どっちでもいいのでありますか…」
「まあ、そうだな」
イタリアはその言葉に驚く。
「ほんと?」
ドイツは口を閉じたままだった。その口から否定の言葉が出るように願っていたが、ドイツは曖昧に首をひねって、目を逸しただけだった。
イタリアはもう一度強く首へしがみ付く。
今度はドイツの腿を跨ぐよう座りなおし、わずかに盛り上がっている股間が擦れるように、その上で軽く腰を揺すった。
欲情させるつもりが、自分が気持ち良くなってしまったイタリアは、必死に声を我慢し、冷静を装った。もっと強く押し付け、服を脱いで肌を密着させたかった。
「ねえどいつ…」
やがて尻の下に、硬く熱を帯びた物をはっきりと感じるようになる。イタリアは自信を持ち直し指摘しようとしたが、ドイツが未だに目を伏せているのを見て、急に寂しくなってしまった。
冷水を浴びせられたように嫌な考えばかりが頭をよぎる。自然と目頭が熱くなり涙が溢れ、何を言ったらいいのかわからなくなってしまい、口を噤んで項垂れていた。
不自然な体勢での沈黙に耐えかねたのか、ドイツがため息混じりに言う。
「部屋に戻るぞ」
「俺ばっか、お願いしてるみたいで寂しいよう……。してほしいことない?」
「ベッドに入って、おとなしく寝ることだな」
「そしたらこれ、どうすんの……? ドイツ」
尻たぶでぐいぐいと真下にあるものを撫でるようにしてやる。
「ひとりずつする……? 一緒にいるのに……」
イタリアは、体のあちこちが最中のように敏感になっていた。尻穴は押し付けられた熱さを求めてひくひくと収縮し、シャツの下で、乳首は愛撫ほしさにぷっくりと立ち上がっていた。自然に息もあらくなる。腰がどうしようもなく疼いて、そこにドイツの大きな手が触れるのを心待ちにしていた。
「ごめんね……、俺、ドイツといると、えっちなこと考えちゃう……」
いつもの体を慈しむような触れ合いもいいが、今日のイタリアは、情熱的で激しい交わりを望んでいた。余裕なんてかけらも残さずに愛しあって、欲のかたまりを、体中で感じてみたかった。
つづき
2011.10.23
湯気の立つマグカップを見つめていると、心地良かった。
四人掛けのダイニングテーブルを挟んだ向かいには、ドイツが同じようにマグカップへ口をつけている。イタリアは服の上に、羊毛の膝掛けを羽織っていた。ドイツがリビングのソファから持ってきたものだ。正直それほど寒くはないが、優しくされるのは気分が良い。
いつも自業自得だと言いながら、あれこれ世話を焼いてくれるドイツが大好きだった。
体の関係があるなんて、今でも現実とは思えない。それは、情事以外でのドイツの態度が、友人であったころと何ひとつ変わらないことが原因だった。イタリアの不満はそこにある。 ドイツは好意を言葉にして伝えてくれない。体は慣れてきても照れがあるらしかった。
イタリアは立ち上がる。飲み終えたカップをテーブルに置き、ドイツの隣へまわった。
ドイツを見下ろし、マグカップを持った右手に触れる。
「これも飲むか?」
ドイツが差し出してきたマグカップを受け取り、そっとテーブルに置いた。ようやくイタリアの視線の意味に気づいたドイツは、眉をしかめる。
「イタリア」
椅子の背に手をやり、身を屈めてドイツへ口づけた。ドイツが逃れようと椅子を引いたところへ、すかさず腰掛ける。
「好き……」
「おい」
「大好きだよ」
ドイツの首に思い切り抱きついて、甘えるように頭をすりつけた。顔を上げ、今度は近距離で目が合うと、再び唇を奪う。
長い口付けが始まっても、ドイツはされるがままだった。
イタリアは思う存分味わった。唇を舐め、舌を絡めとり、ドイツの微かな鼻息にすら興奮して、夢中になった。途中何度かドイツの膝上へ乗り直さなければいけなくて、腰を抱いてくれればいいのにと思う。ドイツが抱きしめ、背を撫でる感触を思い出して、体が疼いた。愛おしさにきゅうと胸が締め付けられる。
ドイツから誘ってくれたことはあまりない。もっと激しく求めて欲しいのにと、イタリアは思っていた。いろいろな場所で愛しあうところも想像した。ダイニングで…、またはいつも使っているソファでだって、庭でだっていい。とにかく、我慢出来ないというくらいの熱い情欲を存分に感じてみたかったのだ。
さぞや興奮するだろうと思い、二人きりのときは期待に胸をふくらませたが、実際そんな雰囲気になることはなく、いつもイタリアからベッドで誘うだけだった。
ベッドでの行為に飽きたなんてことはないが、ドイツの理性が、それ以外の場所では鉄壁なまでに崩れないことが少し悔しかった。
その上、三週間ぶりのセックスを、くしゃみなどという理由で簡単にあきらめてしまえるなんて……
イタリアは目を見開いて、ゆっくり唇を離した。
「今日、プロイセン帰ってこないんだよね」
「ああ…」
ドイツの瞳をいくら覗き込んでも、首をかしげても、ドイツはじっと見つめてくるだけだ。
「ハグして」
「ここから降りたらな」
イタリアは口を尖らせた。なかなか思い通りにならないので落胆し、俯きがちに言う。
「ドイツは…、してもしなくても、どっちでもいいのでありますか…」
「まあ、そうだな」
イタリアはその言葉に驚く。
「ほんと?」
ドイツは口を閉じたままだった。その口から否定の言葉が出るように願っていたが、ドイツは曖昧に首をひねって、目を逸しただけだった。
イタリアはもう一度強く首へしがみ付く。
今度はドイツの腿を跨ぐよう座りなおし、わずかに盛り上がっている股間が擦れるように、その上で軽く腰を揺すった。
欲情させるつもりが、自分が気持ち良くなってしまったイタリアは、必死に声を我慢し、冷静を装った。もっと強く押し付け、服を脱いで肌を密着させたかった。
「ねえどいつ…」
やがて尻の下に、硬く熱を帯びた物をはっきりと感じるようになる。イタリアは自信を持ち直し指摘しようとしたが、ドイツが未だに目を伏せているのを見て、急に寂しくなってしまった。
冷水を浴びせられたように嫌な考えばかりが頭をよぎる。自然と目頭が熱くなり涙が溢れ、何を言ったらいいのかわからなくなってしまい、口を噤んで項垂れていた。
不自然な体勢での沈黙に耐えかねたのか、ドイツがため息混じりに言う。
「部屋に戻るぞ」
「俺ばっか、お願いしてるみたいで寂しいよう……。してほしいことない?」
「ベッドに入って、おとなしく寝ることだな」
「そしたらこれ、どうすんの……? ドイツ」
尻たぶでぐいぐいと真下にあるものを撫でるようにしてやる。
「ひとりずつする……? 一緒にいるのに……」
イタリアは、体のあちこちが最中のように敏感になっていた。尻穴は押し付けられた熱さを求めてひくひくと収縮し、シャツの下で、乳首は愛撫ほしさにぷっくりと立ち上がっていた。自然に息もあらくなる。腰がどうしようもなく疼いて、そこにドイツの大きな手が触れるのを心待ちにしていた。
「ごめんね……、俺、ドイツといると、えっちなこと考えちゃう……」
いつもの体を慈しむような触れ合いもいいが、今日のイタリアは、情熱的で激しい交わりを望んでいた。余裕なんてかけらも残さずに愛しあって、欲のかたまりを、体中で感じてみたかった。
つづき
2011.10.23