Gesundheit4

「はあっ……、うっ…」
 イタリアはうつ伏せに膝を立てた状態で、懸命にドイツを受け止めていた。天井の照明は消え、ベッド脇のナイトランプだけがほのかに光っている。
 挿入時の違和感も過ぎ去り、抜き差しに快感を覚え始めた頃だ。この時を待っていたのだと、イタリアは思う。ドイツたっての希望で、エプロンは脱がずに挿入することになった。丸出しになっているイタリアの尻を抱え、ドイツはゆっくりとしたストロークで突いてくる。
 イタリアは枕を抱え目を閉じ、その感覚に酔っていた。内壁が擦れ、たまに糸を引くように甘い疼きのあるとろこに触れる。よく滑るようにと塗ったローションが、温まって肌に馴染み気持ちよかった。腰を動かされるたび、足の先まで痺れ、まるでドイツに服従している動物のような気持ちになる。
 今まで行為の時は、頑なに全裸を貫いてきたイタリアだったが、たまには服を着てするのも良いものだと感じた。布越しに体を弄られるのは、なかなか悪くない。
「どいつ……」
 もっと激しくして欲しい。だが、今のままゆっくり達するのもいいかもしれない。そんな想いも、突かれるたびに飛散していってしまう。
「あ……」
 こうして繋がっている時、ドイツはどこを見ているのだろう。イタリアの予想では目を閉じている。確認したくて、無理に後ろを向いた。その瞬間にしっかりと目が合って、頭を見ていたのだとわかる。
「どうした?」
「どうも…しないけど。すげー気持ちいいよ」
「俺もだ…」
「えへへ…。俺、すっげーすっげー気持ちいいからね」
 イタリアは再び枕に顔をつけて言う。裸にエプロンだけを着て、それなのにベッドで後ろから襲われているなんて、何かのアダルト映像のようだと思った。ドイツにどう思われているかを想像すると、くすぐったくなる。何かいたずらを仕掛けた時のような、そんな気持ちだった。
「ん……んっ」
「気持ちいいか」
 ドイツはイタリアの良いところを探るようにして、上から体重をかける。
「ひゃ、だめ」
 ピンポイントで責められるともう為す術もなく、ただ快楽を感じるだけだった。
「……どいつぅ」
 不思議なことに、行為を重ねるたび、ドイツに虐められたいという気持ちが強くなる。ドイツが決して、自分勝手な抱き方をしないから、余計にそう思ってしまうのかもしれない。
「どいつ……」
 ほとんど腰を揺さぶっている状態になると、イタリアはただ息を荒げ、喘ぐことしかできなかった。
「はあっ…、や、気持ちいいよぉ、どいつ」
 これだけでも頭の中が真っ白なのに、途端にドイツが、背中に覆いかぶさってくる。感じる温かさに肌がそばだち、腹を撫でられて泣きそうになってくる。
「やめてぇ……、あっ、う、やめないで」
「イタリア」
「もっとして、気持ちいいの、ほしいです…」
「イタリアっ…!!」
 イタリアが絶頂までたどり着くのはずいぶん早かった。射精後の体は、ドイツの丁寧な愛撫によってすぐに次の行為へと持ち越される。
「どいつ……」
 ドイツは荒い息を吐き出しながら、イタリアの腰を撫でた。イタリアはゆっくりと仰向けにされ、ドイツに向かって足を開いた。
 エプロンは片方の紐が肩から落ちていたが、腰紐が解けていないせいで、腹のまわりはしっかりと布が覆っている。
「エプロン汚しちゃった…」
「そんなことはいい。今度はこうして入れるからな…、いいか」
「うん」
 またすぐに中を突かれることになり、イタリアは興奮していた。今まで、イタリアが先に射精すると、ドイツがいつの間にか手淫で済ませてしまい、終わっていることのほうが多かったからだ。
「はぁ、ん、あん…」
 ドイツに求められていると、確信があって繋がるのはとても気持ちが良かった。もちろん今までも最高だと思っていたのに、それ以上のものが、イタリアの胸中に押し寄せていた。熱いもので中を撫でられると、まるで体全体を愛撫されているような錯覚に陥る。
「どいつ、もうだめ……」
 ドイツは腰を打ち込みながら、手を伸ばし、イタリアの頬を撫でた。
「気持ちいいこと、ばっかり…しないで……」
 途端に抜き差しが激しくなって、イタリアは悦んだ。
「あんっ、気持ちいいよぉ、おれ…、このくらいがいい!」
「こんなに、激しいのがいいのか」
「うん、俺っ…、えっちだから、いっぱい欲しい…。やっ…!」
 ドイツが思い切りのしかかってくる。より深く繋がろうとしているのがわかって、イタリアは胸が高鳴る。よりいっそう熱のこもった挿入が始まった。
「やぁ……!あ、んんっ!だいすきだよぉ…!」
「イタリアっ……」
「だいすき……!どいつ……、かわいいよ……」
「……可愛いぞ」
「どいつ…、どいつも気持ちいい?」
「あたりまえだ」
「良かった……」
 ドイツの返事を聴くと、自然と本心が漏れてしまう。
「俺、不安だったから」
 イタリアはそれを口にすると、何故だか泣けてしまった。思った以上に涙がでてしまい、また変な勘違いをされるのではないかと心配になる。
 手で拭おうとしたが、ドイツとずっと視線が合っているので、どうしたらいいかわからなかった。 
「これ、痛くて泣いてるんじゃないよ」
訝しげな表情のドイツに向かって、念を押す。
「悪かった。不安にさせて」
ドイツは、シーツに縫いつけたイタリアの手をぎゅっと握る。イタリアは握り返して笑った。
「ううん、服着てするのって、結構燃えるね!」
「そうか?……なら良かった」
「次はドイツがエプロン着てね」
「次はSMだ」





2011.10.28
メインページ